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省エネ計算書の見方

外皮計算+一次エネ計算の中身を、実例でやさしく解説します。

2025年4月から、原則すべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されました。一方で「省エネ計算書を受け取ったが、どこを見ればいいのか分からない」という工務店・設計事務所の声も少なくありません。この記事では、一級建築士がサンプルの計算書を使って、省エネ計算書に書かれている内容とその読み方を解説します。

サンプルモデルプラン(木造2階建て・2地域)の計算結果概要
外皮平均熱貫流率 UA
0.28W/㎡K
基準0.28に適合
断熱等級6
一次エネルギー(設計値)
110,281MJ
基準177,303MJ 未満
基準比 約42%減
BEI(一次エネの指標)
0.58
1.0以下で適合
省エネ性 良好
※ 説明用サンプル。物件名・寸法・識別情報を除いた架空モデルの表示です。
PDF
サンプル計算書(一次エネ+外皮+部位U値・全12ページ)をダウンロード
実際に納品される計算書と同じ様式のサンプルです(架空のモデルプラン/QR・ID等は除去済み)。
ダウンロード →

省エネ計算書は大きく2つ ― 外皮計算と一次エネルギー計算

住宅の省エネ計算は、性格の異なる2つの計算で構成されます。

この2つが揃って、はじめて省エネ基準に適合しているかを判定できます。計算書もこの2部構成になっているので、まずは「今どちらを見ているか」を意識すると、ぐっと読みやすくなります。

① 外皮計算 ―「UA値」で断熱性能を表す

外皮計算の主役が UA値(外皮平均熱貫流率)です。屋根・天井・外壁・床・開口部などを通って外部へ逃げる熱量(外皮熱損失量)を、外皮面積の合計で割った値で、値が小さいほど熱が逃げにくい=高断熱を意味します。

UA = 外皮熱損失量 q [W/K] ÷ 外皮面積の合計 ΣA [㎡]
※ 床面積ではなく「外皮面積」で割る点に注意。単位は W/(㎡・K)。

あわせて、日射の入りやすさを表す η(イータ)値も算出します(冷房期 ηAC・暖房期 ηAH)。夏は日射を入れすぎない、冬は取り込む、というバランスを見る指標です。

地域区分で基準が変わります。 省エネ基準では全国を地域区分1〜8に分け、寒冷地ほど厳しい基準を課しています(数値が小さいほど高断熱)。北海道は1・2地域にまたがり、全国で最も厳しい水準です。同じ断熱仕様でも、地域が違えば合否が変わります。

地域区分は市町村ごとに定められています。代表例と、省エネ基準(断熱等性能等級4)のUA基準は次のとおりです(2025年に義務化された最低ライン)。

地域区分主な地域(例)省エネ基準(等級4)
の UA基準
1名寄0.46
2札幌0.46
3盛岡0.56
4長野0.75
5新潟0.87
6東京0.87
7鹿児島0.87
8沖縄・奄美

※ 表の地域名は代表的な都市の例です。地域区分は市町村単位で定められており、同じ県内でも区分が分かれます(例:福島県は2〜5地域、千葉県は5〜7地域にまたがります)。必ず建設地の市町村でご確認ください。
※ UAは省エネ基準(外皮基準)の基準値[W/(㎡・K)]で、この値以下であることが求められます。数値が小さいほど高断熱で、誘導基準(ZEH水準相当)では1・2地域0.40/3地域0.50/4〜7地域0.60とさらに小さい値が必要です。8地域はUAの基準がなく、冷房期の日射熱取得率(ηAC)で評価します。

外皮平均熱貫流率 計算書(結果部分・サンプル)
外皮等面積の合計 ΣA335.71 ㎡
外皮平均熱貫流率 UA0.28 W/㎡K
冷房期の平均日射熱取得率 ηAC1.2
暖房期の平均日射熱取得率 ηAH0.9
基準値(2地域・等級6)UA 0.28
判定適合(断熱等性能等級 6)
UA値が基準値以下なら、その等級に「適合」。このサンプルは2地域の等級6基準ちょうどで適合。

なお、この結果を出すまでには外皮面積の「拾い」(各部位の面積計算)と部位ごとのU値計算が必要です。図面から一つひとつ面積を拾い、断熱材・サッシの仕様から熱の通しやすさを積み上げる――ここが実務でいちばん手間と経験を要する部分です。

評価方法には3つのルートがあります。 ③は外皮面積を図面から計算する必要がない一方、省エネ適合性判定は①同様に必要です。本記事は、数値が明確に出る①標準計算ルートに沿って説明しています。
方位別の入力イメージ(北面・記入例)
窓番号(室)幅[m]高さ[m]熱貫流率[W/㎡K]面積[㎡]
W1(LDK)2.001.201.302.40
W2(主寝室)1.601.201.301.92
W3(洋室1)1.601.101.301.76
W4(洋室2)1.601.101.301.76
W5(階段)0.601.101.300.66
北面 窓 合計(例)8.50
方位ごとに、窓・壁の寸法を一つずつ入力して面積と熱損失を積み上げます。※ 上表は数値をすべてダミーにした記入イメージ(実在の建物ではありません/説明のため全窓を北面に置いた例)。

② 一次エネルギー計算 ― 設備も含めた消費量を評価

もう一方の一次エネルギー計算では、暖房・冷房・換気・給湯・照明など設備ごとのエネルギー消費を、共通のものさし「一次エネルギー量[MJ]」に換算して合計します。

ポイントはシンプルで、設計値が基準値を上回らなければ適合。省エネ性能の指標 BEI(設計値÷基準値)が 1.0以下なら省エネ基準クリア、数値が小さいほど高性能です。

一次エネルギー消費量 計算結果(サンプル・1戸当り)
設計値110,281 MJ
基準値177,303 MJ

基準より 約42%削減 / BEI 0.58

設備用途設計一次[MJ]基準一次[MJ]
暖房設備49,756101,972
冷房設備9481,378
換気設備6,0104,678
給湯設備25,29230,746
照明設備7,03417,288
その他の設備21,24121,241
合計110,281177,303
※ 説明用サンプル。QRコード・XML ID等の識別情報は除いています。寒冷地のため暖房の比重が大きいのが特徴。

寒冷地では暖房のエネルギーが大きな割合を占めます。だからこそ①の外皮性能(断熱)を高めておくと、暖房の一次エネルギーが下がり、②の結果も良くなる――2つの計算はこのようにつながっています。高効率給湯機(エコキュート等)や太陽光発電も設計値を下げる要素です。

計算に使う「根拠資料」の例

設備や建具の性能は、メーカーが公表する性能値を根拠として計算します(標準計算ルートの場合)。実際の申請では、次のような資料を収集・添付します(申請書類フルサポートでは、この収集・整理も代行します)。

これらは各メーカーが発行する資料です。1つでも性能値の根拠が欠けると申請で差し戻しになるため、「どの製品の・どの資料が・どこに必要か」を把握して漏れなく揃えることが、実務ではとても重要になります。

省エネ計算書を読むときのチェックポイント

非住宅(WEBPRO)は別の計算です。 事務所・店舗・公共施設などの非住宅は、住宅とは異なる「標準入力法(WEBPRO)」で評価します。用途が非住宅の場合はお問い合わせ時にお知らせください。

参考リンク(公式の資料・計算プログラム)

省エネ計算に使う公式の計算プログラムや、様式・計算シートの配布元です。実務でのご確認にご活用ください。

省エネ計算は、外注できます。

外皮計算+一次エネルギー計算を、一級建築士が直接対応。全国対応・寒冷地(地域区分1・2)の実績多数。
「計算して終わり」ではなく、基準クリアに向けた仕様提案まで伴走します。

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【出典】本記事の基準値・評価方法に関する記述は、国土交通省補助事業「住宅の省エネルギー基準の解説 評価方法2024(戸建住宅編:木造、鉄筋コンクリート造)」(表1.2.1/表1.2.2/表6.3.1/表7.1.1/図1.2.7/図6.3.1)に基づいています。地域の区分は建築研究所の公開情報(https://www.kenken.go.jp/becc/house.html)もあわせてご参照ください。制度・基準は改正される場合がありますので、実際の設計・申請時は最新の告示・公式資料をご確認ください。

※ 掲載しているサンプルは、実案件の計算結果をもとに物件名・入力責任者・QRコード・XML ID・再出力コード等を除去し、名称を架空のモデルプランに置き換えた説明用の表示です。実在の物件・顧客とは関係ありません。実際の計算書の様式・数値は案件ごとに異なります。