省エネ計算の外注費用の相場
依頼前に知っておきたい、価格の考え方。
2025年4月の義務化以降、「省エネ計算を外注しよう」と検討を始めた工務店・設計事務所が急増しました。ところが調べてみると、数千円から十数万円までばらつきが大きく、どれが自社の案件の適正価格なのか判断しづらいのが実情です。この記事では他社の価格を並べる代わりに、何によって値段が変わるのかという価格の構造を整理し、参考として当方の料金と、内製した場合の人件費との比べ方までまとめました。見積りを取る前の判断材料としてお使いください。
そもそも、なぜ相場が分かりにくいのか
同じ「省エネ計算」という言葉でも、実際に含まれる作業範囲が事業者ごとに全く違うためです。たとえば次のどれもが「省エネ計算 ○円」と表示されます。
- 整理済みの数値を入力して帳票を出力するだけの作業
- 図面から外皮面積を拾い、部位U値を計算し、判定まで行う一連の業務
- 基準を満たさなかったときの仕様提案・再計算まで含む設計支援
- 長期優良住宅やBELSの申請書類の作成と質疑対応まで含む代行
作業量が数倍違うものが同じ名前で並んでいるので、金額だけを横に並べても比較になりません。まず「自社が必要なのはどの範囲か」を決めることが、費用を見極める最短ルートです。
価格が変わる4つの要因
どの事業者に依頼する場合でも、見積り額はおおむね次の4点で決まります。
費用を左右する4要因
住宅と非住宅では使用するプログラムそのものが違います。住宅は外皮計算+一次エネルギー消費量計算(住宅版WEBプログラム)、非住宅はWEBPRO(標準入力法)またはモデル建物法です。
非住宅の標準入力法は入力シートの項目数が多く、外皮・空調・換気・照明・給湯・昇降機といった系統ごとに情報を整理する必要があります。同じ延床面積でも、非住宅のほうが工数が大きくなるのが一般的です。
見積りへの影響:そもそも別サービスとして料金が設定されるここがもっとも金額差が出るポイントです。「省エネ計算」だけであれば成果物は外皮計算書と一次エネルギー計算結果ですが、長期優良住宅・BELS・性能評価などの申請まで含む場合は、次の作業が上に乗ります。
- 申請様式への転記、技術的審査依頼書などの書類作成
- 性能証明・カタログ等の根拠資料の収集と添付
- 審査機関からの質疑への回答と資料の再作成
とくに質疑対応は着手時点で総量が読めない作業です。ここが料金に含まれているかどうかで、後から発生する追加費用が変わります。見積りを比べるときは必ず確認してください。
見積りへの影響:計算のみ < 申請書類込み(加算方式またはセット料金)面積が増えれば拾う部位が増えるため、非住宅では延床面積による段階料金が一般的です。一方、住宅では面積よりも形状の複雑さが効いてきます。
- 下屋・オーバーハング・スキップフロアなど外気に接する部位が多い形
- 窓の種類と数が多い(方位別の集計量が増える)
- 増改築・混構造など部位構成が一様でない
逆に、総二階に近いシンプルな形状であれば、延床が大きくても工数はさほど増えません。「面積」ではなく「外皮の複雑さ」が住宅の工数を決めると考えるのが実務に近い見方です。
見積りへの影響:非住宅は面積区分で段階的に、住宅は形状により個別判断短納期は、受注側が他案件の順序を組み替えて対応するため割増の対象になりやすい要因です。逆に言えば、余裕のある納期で依頼するほど条件は良くなります。
ここは発注側でコントロールできる数少ない項目です。着工日や申請の締切から逆算し、可能なかぎり早めに声をかけておくだけで費用面のメリットがあります。
見積りへの影響:短納期は割増、余裕のある納期は交渉余地あり費用の目安(当方の料金)
参考値として、当方の料金を掲載します。「相場の中でどのあたりか」を測るものさしとしてお使いください。いずれも一級建築士が直接対応し、基準を満たさない場合の仕様提案を含みます。
当方は基本の計算料金に質疑対応を含める形にしています。前の章で触れたとおり、質疑は着手時点で量が読めない作業です。ここが別料金だと最終的な支払額が読めなくなるため、基本料金の中に入れています。
住宅|計算を基本に、必要な分だけ積み上げる
| 項目 | 含まれるもの | 料金 | 納期の目安 |
|---|---|---|---|
| 住宅の 省エネ計算 |
外皮計算(UA値・ηAC値)+一次エネルギー消費量計算、判定、帳票出力、質疑対応(2回程度まで) | ¥35,000/件 | 5〜7営業日 |
| + 申請書類 作成 |
長期優良住宅・性能評価・BELS等の申請様式の作成(1提出先) | +¥10,000 | ― |
| + 根拠資料 の整理 |
サッシ・給湯機等の性能証明、節湯水栓・高断熱浴槽の証明書などの収集と添付書類の整理 | +¥5,000 | ― |
| 申請書類 フルサポート |
上記3点をまとめて依頼する場合(計算+申請書類作成+根拠資料の整理) | ¥50,000/件 | 5〜10営業日 |
※ 申請書類作成は1提出先の料金です。提出先が2か所以上になる場合は別途ご相談ください。プラン段階での試算、部分計算(外皮のみ等)、質疑のみのご相談も承っています。
非住宅|延床面積による段階料金
| 延床面積 | 含まれるもの | 料金 | 納期の目安 |
|---|---|---|---|
| 〜1,000㎡ | WEBPRO(標準入力法)の外皮面積拾い、外皮/窓仕様の入力 | ¥30,000/件 | 7〜14営業日 |
| 1,000〜2,000㎡ | ¥40,000/件 | 7〜14営業日 | |
| 2,000㎡〜 | ¥50,000/件 | 7〜14営業日 |
※ 非住宅WEBPRO入力代行は外皮まわりに特化したサービスで、設備関係の入力は対象外です(設備設計者のいる事務所様との分業を想定)。
継続発注なら定額プランも
月に複数件の発注が見込める場合は、定額外注プラン ¥50,000/月(税別・月2件まで・最低3ヶ月〜)をご用意しています。都度依頼で月2件(¥35,000×2=¥70,000)と比べて月20,000円分の差になります。御社専用の仕様マスターと入力テンプレートを作成するため、2件目以降のやり取りも短くなります。
内製したときの「見えないコスト」
外注費を判断するには、比較対象である内製コストを金額で把握しておく必要があります。ところが内製の費用は請求書として届かないため、無料のように見えてしまいがちです。実際には担当者の時間という形で確実に支払っています。
当方の実務経験では、戸建住宅1棟あたりの所要期間はおおよそ次のとおりです(詳細は省エネ計算のやり方で解説しています)。
- 初めて/資料が未整備:約7日(制度と入力方法の習得、資料集め、図面の整備を含む)
- 資料が揃っている:1〜2日(面積の拾い・U値計算・入力・帳票出力に集中できる状態)
これを人件費に換算すると、内製コストの輪郭が見えてきます。御社の1日あたり人件費に近い列をご覧ください。
| 内製の所要日数 | 日額 1.5万円 | 日額 2.0万円 | 日額 2.5万円 |
|---|---|---|---|
| 初めて/資料が未整備 (約7日) | ¥105,000 | ¥140,000 | ¥175,000 |
| 資料が揃っている (1〜2日) | ¥15,000〜30,000 | ¥20,000〜40,000 | ¥25,000〜50,000 |
※ 日額は分かりやすさのための仮の単価です。給与・法定福利費・間接費を含めた実際の人件費単価を当てはめてご確認ください。日数は当方の実務経験に基づく参考値で、建物の複雑さや仕様変更の回数により変動します。
ここに加えて、表に載らない継続コストがあります。
- ソフト・入力方法の習得:初回に集中して発生し、担当者が変わればまた発生します
- 制度改正のキャッチアップ:基準・様式・プログラムは改正されます。年に一度しか使わないと、そのたびに再学習になります
- 手戻りのリスク:地域区分の取り違えや方位別に拾っていないといったつまずきは、日数がそのまま増えます
- 他業務の停止:担当者がその日数だけ設計や現場対応から離れます。これが実務上いちばん痛いコストです
逆に、件数が読めない・担当者を置けない・初回で習得コストがかかる状況では、外注のほうが総額で安く、しかも設計時間を確保できます。当方は「全部を外注」だけでなく、面積の拾いと外皮計算だけ切り出す分担や質疑のみのご相談にも対応しています。
見積り依頼時に伝えるとスムーズな情報
次の5点が揃っていると、どの事業者でもその場で確定額を出しやすくなります。逆に情報が足りないと「詳細を確認してから」となり、往復が増えて時間を失います。
| 伝える情報 | 具体例 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| ① 用途 | 戸建住宅/共同住宅/事務所・店舗などの非住宅 | 使用するプログラムと料金体系が決まる |
| ② 規模・構造 | 延床面積、階数、木造/RC造/S造、形状の特徴 | 面積拾いの工数を見積もれる |
| ③ 建設地 | 市町村名(地域区分1〜8のどれか) | 適用される基準値が決まる。区分は市町村単位 |
| ④ 必要な範囲 | 計算のみ/申請書類も/目標とする水準(省エネ基準・ZEH水準・長期優良など) | もっとも金額を左右する要因 |
| ⑤ 希望納期 | 提出日・着工日から逆算した希望日 | 割増の有無、対応可否が決まる |
※ あわせて手元にある資料(平面図・立面図・断面図・矩計図・建具表・断熱仕様・設備仕様)をお知らせいただけると精度が上がります。仕様が未確定の段階でもご相談いただけます。
安さだけで選ばない方がいい理由
最安値を選んだ結果、差額以上の時間を失うことがあります。見積り額のほかに、次の4点を必ず確認してください。
① 仕様提案があるか
計算して「基準を満たしませんでした」で終わる対応と、「サッシをこのグレードに変えれば満たします」まで提示される対応は、価値が全く違います。基準を満たさなかったときこそ、判断材料が必要な場面です。
② 修正・再計算の扱い
設計の途中で仕様が変わるのは当然のことです。再計算が何回まで含まれるのか、追加料金はいくらかを先に確認しておきます。ここが不明確だと、当初の見積りは意味を持ちません。
③ 質疑対応が含まれるか
申請では審査機関から質疑が来ます。「計算書の納品まで」の契約だと、質疑対応は発注側の仕事として戻ってきます。根拠資料の再作成まで対応してくれるかは大きな差になります。当方は上記のとおり、基本の計算料金に質疑対応(2回程度まで)を含めています。
④ 継続して相談できるか
2件目・3件目を同じ相手に頼めれば、御社の標準仕様を前提に話が進み、やり取りが短くなります。都度別の相手を探すコストも、実は費用の一部です。
まとめ
- 省エネ計算の代行費用に公定価格はなく、作業範囲が違うものが同じ名前で並んでいるため単純比較はできません
- 価格は①住宅/非住宅 ②計算のみ/申請書類込み ③規模と複雑さ ④納期で決まります
- 判断には内製コストを人件費で金額化して並べるのが確実です。初回は約7日=十数万円規模になり得ます
- 見積り依頼時は用途・規模・建設地・必要な範囲・希望納期の5点を添えると即答が得られます
- 比較するときは金額だけでなく、仕様提案・修正回数・質疑対応・継続性を必ず確認してください
まずは概算だけでも、お気軽に。
用途・規模・建設地・希望納期をお知らせいただければ、一級建築士が直接お見積りします。見積りは無料です。
全国対応・オンライン完結。寒冷地(地域区分1・2)の実績多数。お急ぎ対応・質疑のみのご相談も歓迎です。
【ご注意】本記事に掲載した当方の料金・納期は本記事公開時点のものです(定額外注プランは税別表記)。最新の内容はサービス・料金および個別のお見積りをご確認ください。他社の価格については、正確性を担保できないため本記事では掲載していません。内製の所要日数および人件費換算は当方の実務経験に基づく参考値であり、実際の工数・費用を保証するものではありません。2025年4月からの省エネ基準適合義務化については国土交通省の公表資料を、地域の区分については建築研究所の公開情報(https://www.kenken.go.jp/becc/house.html)をご参照ください。制度・基準は改正される場合がありますので、実際の設計・申請時は最新の告示・公式資料をご確認ください。